その6 おいもは美味しい

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「モモコが暮らしていたニホンには、魔法がないんですって。でも、とても便利だと言っていたわ。デンキやワイファイがあるから、って。どんな仕組みなのかしら」  この国では、魔力が全て。  貴族が多く住む王都は魔力や魔道具に満ちていてそれなりに便利な暮らしが出来る。  その反面、魔力の供給がない田舎では、まだまだ不便な生活を強いられている。  便利な生活を享受していたという彼女はてっきりそのニホンの王族なのかと思ったけれど、平民だと言っていた。  そもそも貴族のような制度なんてとっくの昔に廃止されている、とも。  平民でも便利に暮らせる世界――それは、どんな世界なのだろう。  ペスカが言い逃れのために思いつきで話したにしては、あまりにもこの世界とは現実離れしていて――それでいて、どこか真実味があった。 「……お嬢様がその話を信じるのなら、俺も信じます」  モモコが話す世界の話に思いを馳せていると、仕方がないとでも言いたげに、リーベスは表情を崩した。  とても綺麗な笑顔だ。
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