その6 おいもは美味しい

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「だって、空想だとしてもとても楽しそうな話じゃない? 研究のしがいがあると思うの。アンノウイモ、というのは、とても甘くて美味しい甘藷なのですって。私もそのぱふぇを作って、リーベスと食べたいわ」 「俺と……ですか?」 「ええ! だってリーベスは、昔から甘藷が好きでしょう。リーベスが我が家に来る前に、うちに迷い込んだ黒い仔犬も甘藷が好きだったから、タイミングが似ていてよく覚えているの」 「……っ」  私がにっこりと微笑むと、リーベスは短く唸って、さっと顔を背けてしまった。  心なしか、耳の先が赤い気がする。  その仔犬は3日もするといつの間にかいなくなってしまって悲しかったなあ、という事まで思い出してしまった。 「どうしたの? リーベス。おいもが好きでも恥ずかしくないと思うわ。ほくほくで美味しいもの」 「いや……違……」 「だから私、モモコからもっと色々と話を聞こうと思うの。なんだか色々なイメージが湧いて来て、今なら何でも作れそうだわ!」  モモコの話はとても刺激的だった。今すぐ工房に篭りたいくらい。  だけどあとひとつ問題が残っていることも分かっている。  こほん、と咳払いをしたリーベスは、表情をいつもの凛としたものに戻すと、口を開いた。 「ペスカ様が今後もあの状態だとすると……ウーヴァ様との婚約の件はどうなるのでしょう?」 「……それなのよね」  ほんとに、それだわ。
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