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取り決めをした祖父たちは既に天に召されているため、互いの家の当主の了解が得られればそれで問題はないはずだ。
(あ、この感じ……かなりやばいかも)
ついに頭がぐわんぐわんと揺れてきた。
昨日、新しい魔道具を思いついて、開発作業が楽しくてやめられなかったのが原因だ。
「その点は大丈夫だ! もうここにその書類がある。この部分に君のサインをもらえたら、婚約解消は成立だ」
私がそう告げると、ウーヴァは顔を輝かせながら誓約書を取り出した。
家同士で結ばれた婚約。
ケルビーニ伯爵家の当主が認めたのならば良いのだろう。
まさかこんな形で解消になるとは思わなかったけれど。
「そう。じゃあさっさと済ませましょう」
釈然としない部分はあるが、とにかく眠いのだ。早く済ませてベッドに行きたい。
私はウーヴァからそれを受け取ると、目を通したあと、空いている所に名前を書いた。
紛うことなく婚約解消の書類だ。ケルビーニ伯爵家の公印も伯爵のサインもあり、ご丁寧に既にウーヴァの署名は済んでいた。
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