第81話 ブラックボード・ジョーク(テーマ『黒板』)

3/7
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「だから進級する時に、俺は校長と掛け合ったんだ。俺も新しい教室に異動させてくれって。そうしたら『前例がありません』と断られたのさ。生涯一教室勤務なんてお堅いんだよ、学校の規則ってやつは」 「仕事熱心ね、黒板君は」  帰りを急いだためか、白板にはペンの跡がくっきり残っているが、レディにそれは言わない約束だ。酔いでほんのりピンク色に染まる彼女を少し眩しく感じながら、黒板は顔色一つ変えずポーカーフェイスを気取り、新しいビールのグラスを注文した。  しかし親友の伝言板は、黒板が少々あまのじゃくな性格だと知っている。 「飲みすぎるなよ」と注意しながら、冷静沈着な彼らしい助言をする。 「終身雇用制が崩れてるのに、今どきいい職場じゃないか。素直に頭下げて戻れ。公務員のお前がうらやましいよ」
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!