ワシはもうすぐお迎えが来る身だから…

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ワシはもうすぐお迎えが来る身だから…

 さて、只今の時刻は13時過ぎ。列車は6時間近くの長旅を終え終着、宮崎空港駅に到着した。俺たちは普通電車に乗り換え、先程通り過ぎた宮崎駅へと戻ることにした。 「あれ? 宮崎駅はさっき通ったじゃない。何でさっき降りなかったの?」  秋奈が不思議そうな顔をしてつぶやく。 「フッ、おい夏樹よ。バカな秋奈に教えてやれ」 「えっと…… 『にちりんシーガイア』とは、終着駅まで乗りたくなる特急なのさ、で良いのかな?」 「流石、パパ! やっぱりわかってるね!」  なんだかタクヤに褒められたようだ。一度痛い目に合った甲斐があったよ。  鉄道好きの父さんもタクヤも、昨日今日と立て続けに電車に乗ったため、流石に少し疲れたようだ。この後はみんなホテルでゆっくり過ごすことになった。  翌日の朝。  本日の予定は『各自自由行動』。  たぶん、疲れが溜まっていることを見越して、父さんが立てた予定だと思っていたのだが……  ここはJR宮崎駅前。 「お前たち、今日はこのジジイのお守りは不要だ。好きなように遊んで来るがいい」 「何言ってんだよ。昨日の午後みんなホテルで休んだから、もう体力は回復してるだろ?」  俺はそう言ったのだが…… 「たまには親子水入らずで過ごせ。秋奈はオシャレなスポットにでも行って楽しんでこい」  なんだか殊勝なことを言い出した。 「なあ父さん。ここまで来て、俺たち親子に気を使うことなんてないんだよ。父さんだって俺の大事な家族なんだ。だから一緒に観光しようよ」 「アニキたち親子に気を使ってんなら、アタシと一緒にどこか見て回ればいいだろ? アタシはそのために休みをとったんだからさ」 「お前たち…… ありがとうよ。ワシは本当に良い子どもたちに恵まれたもんだ。でも、ワシはもうすぐお迎えが来る身なんだ。だから、お前たちは自分のやりたいことを好きにやれば良いんだよ」 「お迎えって…… ま、まさか父さん、健康診断で何か言われたとか……」 「おい、ちょっと待てよ! オヤジに今くたばってもらったら困るんだよ! アタシの花嫁衣装を見るんだろ!?」  もしかして父さんの散財の理由は、余命宣告を受けたからとか言うんじゃないだろうな?  そんなことを考えていると、父は少し微笑んで穏やかな口調でつぶやいた。 「ありがとうよ。でも…… そろそろお迎えが来たようだ」 「え?」 「は?」
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