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真白な光に目が眩む。
背筋に電流が走るほどの雷鳴が間近で鳴った。
「きゃあ!」
汗がにじむ。耳を塞いでも動悸が激しく、耳のそばに心臓があるみたいだ。
最初の、この男に対する嫌な予感は正しかった。ずっと、つけられていたのだ。いったい、いつから?どこからつけられていたのか。
雷鳴が轟く前、彼が言った言葉の意味がわからない。英語で、気分よくハミングするような、短いフレーズが耳に残っている。サムの言葉が脳裏で反芻してしまう。
「オオーウ!今のは、大きかったデース。Are you okay?」
「あ、はい」
「キョウコー。もし、よろしければ。アナタが読んでいる、その本を教えては、くれないですかー?」
京子は、困った顔をして微笑みを返す。疑いが、この本を見せれば晴れるのだろうか。
「とくに、これといってめずらい本ではないですよ?その『最初の本』でしたっけ?そういわれれば、そうですが……でも、見当違いです」
サムは、きっと『Liber Primus』だと思っているのだろう。しかし──
「これが、私にとって、最初の本ですの」と、表紙にかけたハンドタオルを取り払う。
何度も読み返され、角が丸まったペーパーバック。色落ちして、見るからに古くてボロボロだ。
その表紙に、『Le Petit Prince』とフランス語。その下に『小王子』とルビが振ってある。
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