夕立ちの蝉

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「ええ。そうね。私、そんなにベイリーの娘に似てる?」 「東洋の子は、僕からしたら……あ、いや、KT(ケイティ)の変装が上手いからかも」 「そっかな。バレるの早いと思う」 「それでもいいさ、相手もそれぐらいは警戒してるさ。でもまあ、僕らの中に内通者がいることは確かだし、なんとかしないと。今回の暗号は全て僕らのPGP署名と同一のものだ。ニセモノがホンモノに成り代わってゲームを始めてる」 「まったく。なにが目的かしら」 「案外、同業者かも。KT(ケイティ)。アイツと接触して、なにか分かったことはある?」 「喰えない奴。何を考えてるのか、周期ゼミの研究をしてるって言ってたけれど、たぶんそれ嘘。私たちのことだと思う。髪も虹彩も変えてたみたいだし、のらりくらり、ヘラヘラした印象……もしかしたら、もっと身長が高いのかも。背中がだいぶ丸まって……そう。なんだか現実味がないのよ。フワッと消えちゃうし」 頭の隅に何か引っかるものがある。気になったことがあったはずだ。なんだったのか…… 「13になれない男……」 「ん?なんだい、それ」 「アイツが言ってたのよ。そんなこと」 「13……素数だね。……フッ」 「なに笑ってるの?」 「ああ。いや。……わかったかも」 「え?やつの正体?」 「そこまでではないけど、気づかない?13の前は?」 「12」 「そう。12と言えば……?」 「偶数?」 「そうではなくて、『12』単体で考えて、意味を成す言葉だ」 『12』単体……?12で1つを表すのは12進数だ。時計? 下唇をつまみながら考える。他に何かあるだろうか。 アルビノのように白い手首。その内側のタトゥ。 十字架に円が── 「十二生肖(シィーアシァンシィアォ)!!」
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