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雨宿りで借りた軒は、ところどころ破れたビニール製のひさし。薄汚れて、赤い色が変色している。そこへバチバチと打ち付ける激しい雨音。しのぐには少し心もとなく、隅に張った大きな蜘蛛の巣も大きく揺れていた。
バス停へ続く道は、轍に沿って大きな水溜りを作っている。というよりまるで河川の氾濫だ。水かさが勢いよく増して、一本の濁流へ姿を変えようとしている。
もしかして本当にここは廃墟なのではと思う。が、どうも立ち入り禁止ではないらしい。ボロい自販機が動いている。明かりが弱まるとうなりをあげ、まだ稼働中だと年寄り地味た主張をしている。
壊されてないのが不思議だった。
なぜか補充の際に回収されず、ゴミ箱から溢れた空き缶が雨に叩かれておかしな音を奏でている。
フンと鼻を鳴らした。
スマホの時計を見る。
帰りのバス停へはここから五分ほど。急いで走ったとしてもこの悪路、たいして変わらないだろう。なにより服と荷物を濡らしたくない。予報は晴れだったから、少し待っていれば止むはずだ。早めに目的を果たしたら、急いでバスに乗ればいい。
幾重にも重なる雲のレイヤーが忙しなく流れてゆくなか、京子は天候を占った。
時間の矢は私に味方している。
そう思うことにした。
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