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何年も土の中で生活していた幼虫が、17回目の夏に、仲間の蝉たちと申し合わせたように、地上に出て交配する。
ではなぜ地中で年をやり過ごす回数を勘定できるのか?
またなぜ夏なのか?
蝉が羽化する季節は夏だ。春と夏の昆虫が住み分けられている季節に、進化のルーツを知る手がかりがあるのではないか?
生存本能という言葉だけで片付けてしまうには、納得のいかないことが多いのだと語る。
たどたどしい日本語の熱を浴びせられながら、京子はどこかで周期ゼミが鳴いているような気がして、自然と耳が探してしまう。そもそも日本に生息していない。が、鳴き声は覚えている。
習性とは恐ろしいものだと、サムを見ながら感じていた。
好奇心に導かれ、その真理を、その謎を、知りたいと望むのは人の性なのだろうか?合理的な淘汰の末に、人の持つ好奇心というものは、生存戦略に関わるファクターたるのだろうか。
世界は不思議なことで満ちている。広大な、見えない何かで引き合って、互いの存在を無意識に認めあっているみたいだ。
なにがそうさせているのだろう。
ジジッと、どこかで鳴いた。
雨は止みそうもなかった。
たわいのない質問を投げかけられながら、適当に言葉を返しているうち、ある素朴な疑問が京子の頭の中に浮かんでいた。
周期ゼミについて熱く語るサム……
「あの。じゃあ……サム。こんなことを聞くのも、余計なことかもしれませんが、そんな貴重なセミの生態を、日本に来てしまったら研究できないじゃないですか?」
この質問に、彼は苦笑いして、気まずい顔をする。一度開きかけた口が逡巡して閉じる。けれど、やはり思い返して口を開いた。
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