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番外編 言葉
きらきらした、人。
地べたを座り込む私に手を差し伸ばすその人を見て思ったことは、それだった。
綺麗なオレンジに茶色が混じったような、そんなふわっとした髪をしていて、でも見上げる私の目にはその髪色は光に当たって金色にも見えた。
「お怪我はありませんか?」
聞こえてきた声は、少し低めのもので、聞いていて心地の良いその声の中に、どこか色気を感じ取ってしまう。
更に綺麗な顔をして微笑えんでくるから、ぽうっと見惚れずにはいられなかった。
「………大丈夫ですか?」
反応のない私を確かめるように、その人は心配そうな顔をして尋ねてきた。
その顔すら綺麗と思ってしまう私は、多分この瞬間にはもう既に恋のようなものに落ちていたのだろう。
「は、はいっ、大丈夫、ですっ、!」
焦ったように上擦った声でそう答えて、急いで立ち上がる。
手が差し伸ばされているけれどその手は掴まずに自分で立ち上がってしまって、立ち上がってからそれに気付いて少しだけ後悔した。
それからすぐに、その人が手に持つ花束に気付いて思わず声を出していた。
「あ………、胡蝶蘭………。」
ピンクと白、紫で組み合わされた、花束。
目を引く花だけれど、持つ人が持つと花が霞んでしまうんだなと、初めて実感した。
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