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はじまり
形だけの、結婚。
形だけの、妻。
そんな、形だけの関係性。
それは、普通のことで。
当たり前のことだったから。
良い悪いも、ないと思っていた。
ーーーいいえ。
正直なところ。
うんざりしていた。
そう、自分に言い聞かせていたの。
家の決めたものではあるけれど、それでも結婚した間柄だというのに。
そこに愛なんてなくとも、弁えるものは弁えるべきでしょう?
ーーーせめて、私に知られないようにしてよ。
隠そうと、してよ。
初めてそれを目にしてしまった日から、2年。
式を挙げた翌日の夜だった。
夫になったばかりの人が、他の女とまぐわう場面をまさか目にするだなんて思わないじゃない。
あの時は、すごく、衝撃的だったのを、覚えている。
今更、離婚だなんて出来ないもの。
だから、知らないふりをする事を選んだ。
2年の間。
ずっと誰にも言わず、胸の中に仕舞っていたのにね。
私が何も言わなければ。
私さえ、と。
そうやって、鉄になるような心持ちで湧き上がる軽蔑の感情を抑え込んでいたというのに。
ーーーどうして。
どうして、その軽蔑していることを今自分自身がしているのだろう。
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