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「多田……キス……」 「キスマークつけていい?」 「……見えない所なら」  多田の器用な指が、素っ気ない白いワイシャツのボタンを外して行く。俺は息をつめて首筋が、胸元が曝されて行くのを待つ。  唇が、鎖骨の一番太い辺りに吸いつく。強く吸われて、小さな虫刺されの様な跡が残る。  多田の愛撫は性格そのままにマイペースで、静かだ。カウチに俺を押し倒して、指先が肉を通して浮いて見える肋骨をたどって行く。ぞくぞくする。俺は身悶える。  腕を頭の上まで上げて、カウチのひじ掛けに預けた。無防備な、弱点をさらけ出すような態勢。こんな時ばかりは自分が性においては受動者なのだと、思う。  多田は俺に跨がって半身を起こす。爪の先がそっと小さな乳首を弾くと、俺は声を上げた。  両腕が胸筋に添えられて、親指が尖り始めた突起を捏ねて転がす。直に痺れるような感覚。  呼吸が速くなる。 「……気持ちいい?」  俺の顔を覗きこんで、多田がきく。首へと腕を回して引き寄せ、俺は答える。  イエスの代わりに口付けで。  多田の指が、重なった二人の間に割って入る。互いに膨らんだ股間を擦り合わせる合間にベルトとボタンを外す。俺は多田のジーンズのファスナーを下ろす。  裸に戻りながら何度もキスをして。俺たちは抱き合った。
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