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「……」
目の前で繰り広げられる勝負を、こちらに向かってきたモンスターたちを片手間に倒しつつ、ぼんやりと見つめる。
つか、あのおっさん。頭に生えたツノといい、禍々しい気といい、まさか魔王じゃ無いよな? 見た目は完全に冒険者だけど。
もし、その魔王(仮)が、世界の果てとはいえダンジョンマスターである少女相手に苦戦してるとかどうなのよ。
つかマジで、ここまで来ておきながら、(仮とはいえ)魔王すらも攻略できないとか、ここのモンスターを倒すほどの実力者に籠城作戦させたら、もう完璧だろう。食料面の問題があるから、無理だろうが。
だからこそ、俺はあいつにこうして食料を届けているのだが。
理由としては、村に居る奴らの中で、俺以外がボス部屋まで辿り着けないからだ。
「ぐっ、やるな。小娘」
「はっはっは、その程度か。勇者よ」
お前はどこの魔王だ。
あと、目の前に居るそいつは勇者ではなく、魔王だ。
モンスターを倒し、処理するのにも飽きてきたので、体育座りで二人の勝負を見ていたら、何匹かの人形モンスターが同じように体育座りで勝負を見ていた。
しかも、いつの間にか数が増えてる。こちらに敵意が無いからと、放置していたからなのかもしれない。
「……食うか?」
食べさせて良いのかも分からなかったが、ただ見ているだけなのも退屈なので、隣に座っていた妖精種(というより精霊の類いか?)に勧めてみる。
『貰う』
簡単な菓子だが、口に入れた妖精種は驚いた顔をこちらに向けてきた。
はっきり言って、性別が分からないし、あるのかも分からないが、何となく仲良くなれそうな気はした。
他の人形モンスターにも菓子を配ってみれば、妖精種と似たような反応はされたが、彼らの言いたいことを察せられるようになってきたらしい。
また逆も然り。
「あー。やっぱあいつ、お前らにも迷惑掛けてるのか」
俺がそう言えば、頷く人形モンスターたち。
『いつの間にか階層が増えてることもある』
何だ、冒険者どころか地図士やモンスター泣かせなのか。あいつは。
『それはまだ序の口。新しく出来た階層のフィールドに、いきなり引っ越せとか言うこともあるから』
「……うわぁ」
『ぐぐぎっ、ぐぎっぐぎっ!(オレなんか、レベルが足りないのに、引っ越せって言われたんだ!)』
「あー、レベルが足りないと、大丈夫だと分かっていても死ぬしなぁ」
『ぐぎ、ぐぎぎっ(ああ、時折、自分の能力を過信し過ぎて、死んでいく奴らも居るがな)』
そうか。モンスターの世界にも、そういう奴らが居るのか。
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