俺の幼馴染は世界の果てのダンジョンマスター

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「で、でも、ここに来たりしたら……」 「なあ、俺さ。そもそもまだ、自分の意見を言ってないんだが」  幼馴染が悲しそうな顔をする。  だから、何で俺から悲しいことを聞かされると思ってるのかね。こいつは。 「俺は、今まで通りにここに来るし、お前を一人にするつもりはない」 「でもっ……!」 「いいから、最後まで聞け。早とちり娘」  そう言って、気持ちを落ち着かせる。 「一回しか言わないから、よく聞け。さっきも言った通り、今まで通りにここに来るし、お前を一人にするつもりはない。で、どうすれば良いのかを、俺なりに考えてみた」 「……」 「だから――もう、一緒になるぞ。親たちの思惑通りになるのは(しゃく)だが、お前を一人にせずに済むし、家にも困らない。俺が魔族化したところで、そんなに支障はないだろうし、生活できるだけマシだからな」 「……」  幼馴染が先程から驚いたまま、一切言葉を話さない。  ちなみに、俺の告白をモンスターたちはニヤニヤしながら聞いてやがった。後で蹴り倒してやろう。 「どうかしたか?」 「娘、返事してやれ。男の一世一代の告白を無かったことにするつもりか?」 「――ハッ!」  俺が声を掛けても、返事をしなかったのに、魔王が声を掛けて反応するとか…… 「別に嫉妬するようなことは何も無いだろうが。心の狭い男は嫌われるぞ?」 「うっさい。そもそも嫉妬じゃねぇし。大体、おっさんがそいつ揺らして意識戻したってこと、分かってるからな?」 「チッ、つまらん」 「何か言ったか?」  ばっちり聞こえていたが、今は無視しておいてやろう。 「で、返事は?」 「あ、その……」  目が泳いでいる。 「じゃあ、また明日来る」 「えっ」 「えー、先伸ばしかよー」  つか、魔王。お前、ダンジョン攻略が目的だったんじゃないのかよ。  それが何で、モンスターたちと一緒に俺たちのやり取りを見てるんだよ。 「それじゃあ、俺はもう行くからな」 「あ……」  幼馴染が何か声を洩らしたような気もするが、その後に何も言ってこなかったことから、単に言い悩んでいるのか、何の用事も無かったか、それとも――俺を引き止めたかったか。  最後にそう判断したのは、服の端を引っ張られたから。 「……いや、その必要はない、から」 「ん?」 「また、明日に来る必要はないから。……リュー君が、私で良いなら、それで構わない。正直、嬉しかったから」  幼馴染にしては珍しく、赤くなっている。
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