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二人は最後の最後まで、魔力を出し切ったのだ。
「あ、しまった――さぁ、次は私よ。そんなになにか持っていたいのなら、これを渡すわ」
マリッサは、鞭をヘンリーに手渡した。
「ふん」
ヘンリーは抵抗することなく鞭を持った。
そして、赤い瞳がチサを見つめ、魔物はチサのほうへとゆっくり歩き出す。
「い、いやっ」
チサは尻をついた状態で足で地面を蹴り、背後へ下がって行く。しかし、腕を拘束されているため、体勢が崩れて横に倒れてしまった。
マリッサの黒く巨大な手が伸びてくる。
チサと巨大な手の間にヨーコが立った。
「ヨーコ」
ヨーコの背中が震えているのが見えた。しかし、その勇敢な背中を見る限り、自分よりも何倍も大きい魔物に恐怖しているわけではないと、チサは感じた。
ヨーコも魔力も体力もないのだ。
ヨーコは胸の前で手を合わせ、体の隅々からほぼなくなってしまっている魔力をかき集めていく。
そして、両手を魔物に突き出した。
頭一つ分ほどの火球が弱々しく出現する。
「はっ!」
ヨーコは、魔物に向かって放った。
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