12.聖なる魔法

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 二人は最後の最後まで、魔力を出し切ったのだ。 「あ、しまった――さぁ、次は私よ。そんなになにか持っていたいのなら、これを渡すわ」  マリッサは、鞭をヘンリーに手渡した。 「ふん」  ヘンリーは抵抗することなく鞭を持った。  そして、赤い瞳がチサを見つめ、魔物はチサのほうへとゆっくり歩き出す。 「い、いやっ」  チサは尻をついた状態で足で地面を蹴り、背後へ下がって行く。しかし、腕を拘束されているため、体勢が崩れて横に倒れてしまった。  マリッサの黒く巨大な手が伸びてくる。  チサと巨大な手の間にヨーコが立った。 「ヨーコ」  ヨーコの背中が震えているのが見えた。しかし、その勇敢な背中を見る限り、自分よりも何倍も大きい魔物に恐怖しているわけではないと、チサは感じた。  ヨーコも魔力も体力もないのだ。  ヨーコは胸の前で手を合わせ、体の隅々からほぼなくなってしまっている魔力をかき集めていく。  そして、両手を魔物に突き出した。  頭一つ分ほどの火球が弱々しく出現する。 「はっ!」  ヨーコは、魔物に向かって放った。
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