プロローグ―前書き

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 私は、こう書いていて不思議に感じている。  なぜ、わざわざ「魔法」と書いているのか。  魔法ではないことを指す言葉が、私には見当たらない。  あえて、魔法で存在していることを魔法と記している。  生まれた時から魔法は、常に身近に存在し、生きる上で、なくてはならない。  しかし、今これを書いている部屋の窓から見える月は、魔法ではないという。  太陽も魔法ではないと知ったのは、彼と出会ってしばらくしてから。  偉大な魔法使いが、月という魔法を発動させているから存在しているようにしか思えない。  いまだに私はそれを信じることができていない。  ――魔法には、人の気持ちが内包されている。  彼には、魔法のなんたるかが見えていた。  彼と出会わなければ、このことも一生知らないままであっただろう。  これからここに書くことは、  彼とともに緋色を探求して、世界の真実にたどり着くまでの記録。  彼が私のそばにいた時の物語。  きっとこの本が読まれているということは、まだこの本の魔力が残っているのだと思う。  もし、魔力が少なくなっていたら、また魔力を吹き込んで欲しい。  できれば、彼と一緒にした証を私は消したくない。  私の記憶が、まだしっかり残っているうちに書いておく。
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