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しかし、魔物が吐いた強い息で、火球と炎の勢いは瞬く間に弱まって、白い煙をあげて火球は消えてしまった。
ヨーコは肩で息をして、ガクッと膝をついて倒れそうになった瞬間、魔物の拳によってヨーコは後方に弾き飛ばされてしまった。何度か地面で跳ねて、回転する体は静かに止まって動かなくなってしまう。
「ヨーコ……」
チサは、すぐに自分の正面に圧迫感を感じて、顔を振り向けた。
もうその時には、マリッサの巨大な手がチサの体を包みこもうとしていた。まるで恐怖の闇に飲みこまれるようだった。
体を巨大な手に握りしめられて、チサの頭だけが拳から出ている状態だった。息はできるが、体の締めつけが強く、思うように呼吸ができない。
このまま握りつぶされてしまう不安も強く、心臓の鼓動が細かく速く打つ。どうやって息をしていたのか忘れてしまったようだった。
チサをつかんだ魔物は、三賢者がいる巨大樹に向かって歩きはじめた。それに近づいていけばいくほど、傘のように広がった枝葉の幹が太いことがわかる。
「これ以上、近づけはさせん」
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