12.聖なる魔法

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 魔物の前に、シュナイダーが一人現れた。残り二人の賢者は、木の生えた球体の下に座ったまま念を送りつづけていた。 「なぜ、止めるのです。これが成功すれば、あなたもここで一生を過ごす必要はなく、余生を楽しむこともできます」  マリッサが言った。 「女子(おなご)を離さないかい」 「あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ」  チサは、マリッサに強く握りしめられて、体の軋みと苦しさに叫んだ。 「人一人の血で、星が変わると思うか。犠牲など、悲しみしか生まん」  シュナイダーは、無造作に、巨大樹の幹を切り落とせるほどの光の剣を出現させた。  チサは、自分を握る魔物の腕が、ぴくりと一瞬引く動きを感じた。 「我々の住む星は、毒に侵されて死にかけている。かろうじて、こうして賢者が死なないよう維持しておる。毒抜きもできはじめているし、もう数百年もすればよくなるだろう」 「賢者ならみずからの犠牲は許すというのか」 「命をここにあずけてしまう意味では、犠牲かもしれぬ。だが、自分の魔法が星を守り、その上で生活する人々を守ることができるのが賢者だ。最高の魔法使いの仕事だ」
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