1.ファーストコンタクト

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1.ファーストコンタクト

1  その日の授業が終わった。先生が教室を出て行くと、張り詰めていた糸が緩んで騒がしくなる。 「あー、待って、消えないで。誰か、それ、止めて」  教室に響き渡る声に、チサは顔を上げた。慌ててノートを取ろうとしているヨーコがいた。  先生が板書した魔法陣やその解説が、光を失うように消えて行く。もし、今消えかかっているそれを止めても、読み取れないくらい薄くなっていた。 「チサ、ノート見せてくれない?」  おでこに赤い跡をつけたヨーコが、やってきた。 「寝てたの?」  チサは、しまいかけたノートを取り出して、差し出した。 「いや-、魔法陣理論は難しくてさ」  その時、ヨーコは後ろを走り通った男子生徒に肩をぶつけられた。 「ちょっと!」  男子は、両手を合わせて謝るだけで、教室を出て行った。 「騒がしいやつらだこと」  今日一番に眠い授業が終わり、羽を広げているようだった。 「今日、あの結果が返ってくるね」 「チサは、増えそう?」 「私は、一つ増えていればいいかな」  チサは、ピンク色のメガネを指で位置を直した。
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