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一方で、父は、娘の外見に関する、領邦の公民達の評価を理解していた。……仕方がないのよ。女性の美しさにだって、その時々の流行ってものがあるから。わたしだって、もう千年ほど早く生まれていれば、天下の美姫と評判になっていたはず。
その上わたしは、オツムの出来も大したことないし、性格も……いえ、それほど悪いわけじゃ、ございませんのよ?
つまり、何が言いたいかと言うと、ロタリンギア王国の王太子を繋ぎとめておくには、わたしでは荷が重すぎたということ。
……「もし、ジュリアン王太子が、他の令嬢に目移りしたら、」
そういうわけで、父は、ある呪文をわたしに授けた。
モランシー公爵家には、代々、伝わる魔術がある。もっとも、財宝や秘伝の技と同じく、次第に、伝えられる魔術の数と、質も、目減りしているけど。モランシーの末裔であるわたし自身、自分のことを考えると、まあそうだろうな、と思う。
忘れっぽいわたしの為に、父は、何度も何度も、その呪文を練習させた。学園に入学してからも、時折、母国モランシーから、オウムが飛んできて、大切な呪文を、わたしが忘れていないか抜き打ちテストをする。もちろん、落第ばかりで、テストの後、わたしは何度も、オウムの後について、呪文を練習させられた。
結構難しい呪文なのよ、これが。
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