婚約破棄

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◇  「コルデリア! このバカ娘が!」 モランシーの宮殿に、父の王の怒声が響く。大混乱になった、卒業パーティー会場から抜け出し、故郷モランシーへ帰ると、怒りの形相の父が待ち構えていた。 「お前は一体、何てことしてくれたんだ!」 もちろん、わたしにも言いたいことはあった。 「お父様こそ! わたしにいったいどのような魔法をお授けになりましたの?」 「なんだと? お前は、自分が教えられた魔法も理解しておらんかったのか!?」 「あんな難しい呪文、丸暗記するだけで精一杯でしたわ!」 「そうだった。お前のお脳が軽いのを、すっかり忘れていた」 父は、深いため息を吐いた。 「わしがお前に教えたのは、お前が魅力的で、賢そうで、その上、グラマラスな女性に見える幻惑魔法なのだよ」 幻惑? ええと。幻惑しなければ、わたしは、魅力的で賢そうに見えないわけね。 でも……。 「グラマラスはどうかと思いますわ。確かに、エリザベーヌは爆乳だけど、あれは、肩が凝りそうで、わたし的にはNGですわ」 わたしが言い返すと、父は激昂した。 「お前の好みなど、聞いておらぬわ! グラマーは全哺乳類の憧れなのだ。ジュリアン殿下は、ことのほか、乳のでかい女性がお好みだと、スパイが言っておった」 だからあっさり、エリザベーヌ(どろぼうねこ)に、持っていかれちゃったわけね。 「お父様。スパイまで放っていらっしゃったんですの?」 「不肖の娘の為なら、親は、何でもするのだぞ」 「お父様……」 ここはやっぱり、感動するところよね?
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