第二章『ナオの回答』

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第二章『ナオの回答』

ちょっと長くなるかもなぁということで、二人はいつの間にか公園のベンチに座って話していた。 ベンチに深く座り空を見上げるナオ。 「なんでだろうな?改めて聞かれると不思議だな」 あの頃の自分はその子のどこに惹かれたのだろう? しばしの静寂。 「・・・歌声かな」 ナオがポツリと呟いた。 「歌声?」 「その子、真ん中は歌がすごく上手かったんだ」 「真ん中?」 「あっ、その子の名前『まなか』っていうんだけど、あだ名でずっと『真ん中』って呼んでたんだ」 ナオお得意のあだ名は当時から健在だったのである。 「歌声かぁ・・・なんか良いね、その惹かれ方」 「そうか?・・・そうかもな」 ナオはなぜかリナに褒められて嬉しかった。 「で、その愛しのまなかちゃんは今どこに?」 「あっ、お前からかいだしたら話すのやめるぞ」 「ゴメン、ゴメン。真面目に聞くから」 ナオが立ち上がろうとしたのを慌てて止めるリナ。 「俺が小学校入る時に転校しちゃったんだよ。確か大阪だったかな」 「そうなんだぁ。それから連絡は?」 「何回か手紙のやり取りはしたけど、いつの間にか終わってたな。当時はまだ携帯も持ってなかったしな」 「なるほどねぇ。それでナオの初恋は自然消滅したのか」 「そんなとこだな」 リナにはそう答えたが、本当は自然消滅なんかじゃないことは分かっていた。 ナオが別の人物に恋心を抱いたから。 手紙を送るのをやめてしまったのだ。 もちろん真ん中には悪いことをしたと思っている。 真ん中は今自分達とは違う場所で違う友達(仲間)と輝いている。 今ならちゃんとあの時の謝罪と応援の手紙を送れるかもしれない。 一人の友達として、 一人のファンとして。 「さっ、帰ろうぜ」 ナオは勢いよく立ち上がった。 「ちょっと待ってよ。ねぇ、今のトモに話していい?」 「バカ。やっぱお前言うつもりじゃねぇか」 「いいじゃ~ん。トモなんて言うかなぁ~」 そんなことを話しながら公園を後にする二人。 この後、ナオが真ん中に手紙を送ったかは定かではない。 ただ、ナオの部屋の机の上の書きかけの便箋には、こんな文章が書かれていた。 『キリッとした眉で 朝日に照らされ 可憐に舞う君に 焦りなどない 止まなかった雨は ないのだから』 〈仮・おわり〉
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