そして…

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「瑠李の様子はどう?  大丈夫なの?」 何度も久我山や悠未からも 回復の具合は聞いていたが 愛生はどうしても、朔也にも 尋ねずにはおれなかった。 「ありがとう、かなりいいよ。  早いうちにリバビリも  始められると言われてる。  君は?大丈夫?もうどこも  痛くはないの?」 「ええ、すっかり!  ホントにすっかりいいの。  以前より健康になったくらい。  心配しないでね」 「よかった…よかったよ」 朔也が素直に喜べる愛生らしい、 昔の愛生らしい優しい笑顏に 悠未はそっと扉を閉じた。 「お子さんは?」 「浜松の瑠李の実家だ。  両方の家の近くに越した。  仕事も鳥居君の配慮で  地元の会社に替わった」 「…そう…浜松で…」 「ああ、浜松でやり直す。  瑠李や子供もためにも、  君を不幸にした償いのつもりで  一から出直す」 「そうしてね…  もう私はあなた達の前には  現れないから…  遠慮せずに幸せになって」 「愛生…」 「憎しみに囚われて  瑠李の脚を失わせたこと…  心からお詫びします」 「詫びるのは僕だ…。  僕さえちゃんとしていれば」 「もう…もうやめましょう。  あなたと…私のために」 「君の?」 「私が私らしく生きるために」    
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