side   愛 生

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「数字弱いのに経理なんてぇ  申し訳ないんですけどぉ」 自己紹介で悠未自身が言った通り どうして経理に配属になったのか、 不思議なくらいに悠未は 数字に疎かった。 それは二日もすれば 周知の事実となったが、 悠未が“経理部のマスコット”と なるにも、二日は掛からなかった。  「悠未ちゃん、これコピー」  「僕も頼むよ、悠未ちゃん」  「人事までお遣い頼むよ」  「ついでにコーヒーも   淹れて貰えれば有り難い」 まるでずっと以前から 悠未が存在するように 方方から“悠未コール"が響く経理部。 そして部内の新人、悠未の歓迎会… いつも以上に盛り上がる飲み会で、 そつなくホステス役ををこなす悠未、 自分の歓迎会だと言うのに。 「私、こういうことしか  出来ないひとだからぁ」 笑顔で取皿を並べる悠未の細い指は (怖いくらい、白くて綺麗…) 愛生はやはりいつも気になって ついつい見入る始末。 結果… 「新倉先輩、ビールの追加を  お願いできますかぁ?」 「あ、ごめんね、気が利かなくて」 悠未に注意されてしまう愛生。 火の出るように恥ずかしい 自分の至らなさに慌てて 立ち上がり、注文して… 「 ?! 」  席を外したのは、ほんの ほんの一、二分だったはずなのに、 さっきまで愛生がいた 朔也の隣には 悠未が座っていて・・・ 「飯島さん、すっごく話上手ですぅ!」 朔也の肩を叩く仕草の 悠未の指輪が煌めいて 愛生にはとても怖かった。      
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