そして…

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とても重要なことを サラリという久我山に 愛生は驚いた。 「奥様を奪った運転手を  憎いとは思わないのですか?」 「思いましたよ、上が幼稚園の  下が生まれたばかりの子供二人の  大切な母親になんてことを  してくれたんだって…。  憎いどころか、呪ってやろうと  いう勢いだったなあ、ハハハ」 “呪い”を笑い飛ばす久我山の 豪快さに愛生はつい… つい…自分自身を差し置いて つい…笑みが漏れた。 「何度も何度も家にきて  運転手さんは土下座をされて…。  弁護士に伺うと、寝たきりの  母親を抱えて、たった独りで  …やってる方なんです…。  そんなことを聞いた上に  何も解らない上の娘が  『こんなに謝ってるひとを   ゴメンなさい出来ないパパは   悪魔ちゃんだ!』って  泣いたりしてね…」 “悪魔”…まるで愛生自身が 指されたような言葉に俯く愛生。 「同乗者の方…目が覚めて  一番にあなたの無事を確認  されて…大声で泣いてました」 「せ、先生…私…  私は…彼女になんて…」 「何も言わなくても  あなたが元気になるだけで  彼女の行為は報われます」 久我山の微笑みは 数年ぶりに・・・・・ 愛生の心に “人間”を復活させた。  
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