side   愛 生

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風邪を拗らせてしまい 忙しい六月末に、 一週間休んでしまった愛生が やっと出勤出来た電車の中、 「三日前のお昼、飯島くん  角の蕎麦屋で“あのこ"と  二人で食事していたわよ」 咲希が愛生に耳打ち…。 (昨夜…うちに来てくれたときには  そんな話…してなかったのに) 不安な気持ちで 部室へ出社してからも 何ひとつそんな話はなく、 朔也は部屋の片付けなど してくれながら 「だいじょうぶか?」 愛生を労る言葉だけ。 わざわざするような話でないにしても 朝から愛生はそればかりが 気になって仕方なかった。 気になる…それは悠未の美貌や 立ち居振る舞いのせい…  (一人舞台の主演女優) そんな感じで部内を、社内を闊歩。 未婚・既婚に関わらず 男はみんな悠未に声をかける。 だからと言って、朔也の様子が 変わった風でもない、 朔也の目が悠未を追うことはないのだ。 だから余計に愛生は、気にしてしまう。 けれど、午後になっても… また週末に朔也の部屋へ行っても 悠未と食事をしたことを 朔也が話してくれる気配など なかった。
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