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「……お父様……何と?」
二人分の記憶処理が漸く落ち着いてきた頃、俺は王の執務室に呼び出された。
呼び出された瞬間、ちらりと嫌な予感が脳裏を過る。
何事も無ければいいと思いながら俺は足早に階段を上がっていった。
扉の前に控えた騎士二人が俺の姿を認め、ゆっくりと扉を開けた先にあるのは広い机。
其処には書簡を手にしながら、もう片方の手で困ったように額を押さえる父、ファレナス国王がいた。
視線をずらすと、横の応接セットには母である王妃が先に座っていた。
「セラフィリーア、まずは中に入って座りなさい」
「失礼いたします」
母の向かい側に座ると、母も小さく溜め息を吐いた。
その母の隣に文机から立ち上がった父も座る。
父は金の豪奢な髪を短めに切り、瞳は濃い青。健康的に日焼けをして程好く引き締まった身体は男の色気が滲み出ている。
母は、見た目は中性的であるが性別は自分と同じ男性であり、たおやかではあるがしっかりとした骨格で、自分よりは少し濃い水色の髪を肩口で切り揃えており、透き通った瞳は紫色をしている。
どちらも美男子と言っていい。
その二人をぼーっと見ていると、父がこほんと咳払いをする。それにはっとして俺は居住まいを正した。
「セラ、隣国の使者がこれを持ってきた。お前に関することになる……」
ことりとローテーブルに置かれたものを手にして中身を見ると、それは隣国からの親書だった。
「お父様……?」
親書を手にして開くと、その中に書かれた文を読む。
最後まで読み終えてから、信じられないともう一度頭から読み始め、最後まで読み終えてから意味がわからないと両親を見る。
その両親ともに困惑した表情を浮かべていた。
セラフィリーア王子を成人後に、アルトリア皇国国王の伴侶としたい。
要約するとそのような内容だった。
アルトリア皇国は最近代替わりをした。
王の容態が悪いと国民には知らせていたが、本当のところは不明である。
簒奪による代替わりとの噂もあった。
「セラ、お前が望まないならそれなりの回答をするから、心配しなくていいよ」
父の目が細められる。
そう言ってくれるが、断ることはできないだろう。
どうしたものかと詰めていた息を吐き出してセラフィリーアは天井を見上げた。
ファレナスの成人は18歳
セラフィリーアはあと数ヶ月成人してしまうのだ。
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