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「どうして…」
俺は自室に戻ると頭を抱えた。
確かにゲームでギルド名『アルトリア』と言うチームがあった。
むしろ、イベントでいつも上位に入ってくるギルド名で、課金要素の無いゲームだからこそ、ギルドの中のプレイヤーが結束して国を作っている。
凄い。ただただそれだけで自分との接点は無かったはずだ。
国に所属できる人員いっぱいで、やる気さえあればレベルは問わない…確かそんなギルドだったのを何となく思い出した。
俺はゆっくりと深呼吸をしてから部屋に置かれた文机の引き出しを開くと、今まで書き留めたノートを取り出し開く。
ノートといっても安っぽいキャンパスノートとかではなく、しっかりと縫製された厚い表紙のノートだ。
赤い表紙に金の文字で刻印がされている。
書いてあるのはプレイしてきたものの記憶で、今まであったイベント、世界観、交流のあった人物の名前等。その中にはアルトリアの名前は無かった。
もちろん、書き込むのは読まれてもわからないように日本語でなのだが。
この世界の共通言語はベースは日本語。まぁ、日本のゲームだからね?
文字はカタカナがベースで数字は10進法。
それだけは助かったなと思う。
異世界転生は言語に関してチートで、何でも喋れるし、書いた日本語が直ぐに翻訳されるのがたぶん普通なんだけど、そんなこと無さそうだし……。
「思い出せるか……な」
関係ない方向に思考が引きずられる前にと、ゆっくりと呼吸をしながら目を閉じる。
王の名前……アイヴィス・アルトリア
軍事大国であり、その要は飛竜騎士団。
王族と騎士の一握りからなる騎士団は字のごとく飛竜に騎乗する事で有名だ。
要塞とも呼ばれる城造り。
広い国土。
城下町では商業が、郊外では農業が発展している。
また、国の北部に海があり、その向こう、小さな島で竜が産まれ、アルトリアの地に海を渡ってくる。
その渡ってきた竜と契約した者が竜騎士となることができる。
空を飛ぶ竜は三種。赤竜、青竜、黒竜。
アイヴィスは確か……黒竜と契約を交わしている。
竜は、確かちょっと前のイベントで貰えた使い魔の玉子から稀に現れるモンスターだ。
手に入れるのか凄く大変で、なかなか貰えなかったが、騎士団ができるほどメンバーが玉子を得られたのは、凄いの一言だった。
そんな事を書き足しながら、自分の国のことも書き出す。
自分が作ったファレナスは、小国だ。
農業や漁業、工芸など、多岐に渡り力を入れたため、国としては潤っているが、アルトリアには及ばない。
その大国の王がどうして伴侶に自分を名指しできたのか。
しかも側室ではなく正室として。
使者の言うことには、王には現在一人も妻がいないとのこと。
婚約者すらいなかったのだろうか。
いや、自分が知っているアイヴィスは、最初から王だった。
……ちょっと待て、俺もアイヴィスも、男同士だぞ!?
自分を嫁にすることより、そっちの方が問題だろう!
その事に気付いて俺は顔面蒼白になったのだった。
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