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その頃、俺・羽村リョウジは。
「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ざくざくざくざくざくざくざく。
「てやああああああああああああっ!!」
ざくざくざくざくざくざくざく。
「そぉぉおおいやぁぁぁあああああああっっ!!!」
ざくざくざくざくざくざくざく。
一人林の中で、何故か、死にものぐるいで穴を掘っているのだった。
「……ぜぇ……はぁ」
しかしさすがに疲れてきた。
穴の底にスコップを突き刺し、もたれ掛かって呼吸する。
見上げると真円の夕空。かなり掘った。
汗を拭い、自分の功績を讃えるべく皮肉な笑みなど浮かべてみた。
「へ……見付からねぇなあ、埋蔵金」
「ばかじゃないの」
「む」
穴の縁に人影が差す。二人分のシルエット。
「まったく……非常招集って言うから何事かと思えば。何? 私に穴掘りの手伝いでもしろっての? イヤよ、絶対イヤ。服が汚れるじゃない」
一人は同世代の女。日傘を差し、肩にウサギのぬいぐるみを乗せ、呆れた声で俺を見下している。ゴシックドレスに猫のような吊り目が挑戦的だった。
「…………」
もう一人は長髪の男子高校生。銀髪に黒学ランなんてえれぇファッション。何故か段ボール箱を抱き、珍しくお喋りな無駄口を閉ざしているが、代わりに脇に置いた檻からけたたましいケモノたちの声が聞こえていた。
みぎゃーふぎゃー。
そんな不吉大合唱を浴びながら、俺は唇の端をつり上げる。
「来たか、お前ら」
「来てやったわよ、狩人見習い君。それで? 私たちに何の用なわけ?」
俺は顎の汗を拭い、真剣な目をして言った。
「決戦だ。手伝え、“葬儀屋”。一人二千円、俺のポケットマネーで払ってやる」
「はぁ……あんたねぇ。飲食店のアルバイトかってーの」
そして訪れたお買い物の時。
しめて合計四千円、秘密の人件費なのだった。
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