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3.死神の迎え
男性の姿をした死神は今日、この病院で死ぬ運命にある男の迎えに遣わされていた。もう、最近の人間は、黒いローブに大鎌の姿を見ても驚いてくれない。科学が発達し、町には灯りが増えた。驚いてくれないだけなら良いものの、信じてもくれない。そう言う訳で、死神たちも最近は人間に紛れるようにしている。黒いスーツの懐に、魂を入れて運ぶエコバッグを忍ばせ、エレベーターに乗って病棟へ。目的の五〇五号室まで難なく到着した。何故か病室の前にパイプ椅子が置いてある。まさか、死神の到来を悟って誰か見張りにでもついていたのだろうか? 見張りくらいじゃ死神は追い返せないって言うのに。
ノックをしてドアを開けると、自分と似たような黒いスーツを着た男二人が既に病室の中にいた。この二人も死神だろうか? バッティングしてしまった? ただでさえ最近は、天使が出しゃばったりして面倒だと言うのに……と思ってよーく見ると、その二人は人間だった。
「アーノルド・ジョーンズか」
「これはこれは、デズモンド・ハミルトン刑事」
片方は警察官らしい。どうやら敵対しているようで、二人の間では感情の火花がバチバチと散っていた。人間には見えないが、魂を知覚できる死神にはよーく見えた。二人はすぐに、第三の男に気付き、
「なんだお前は。お前も警察か?」
「お前の手の者じゃないのか?」
アーノルドとデズモンドが口々に尋ねる。死神は愛想の良い笑みを浮かべ、
「いえ、わたくしの事はお気になさらないでください。どうぞ、続けて」
死神としては、今まさに床の中で死のうとしている男がその時を迎えるまで待っていなければならないし、死んで魂が抜けてきたらすぐに連れていかないといけないのだ。この人間同士の争いにかかずらっている場合ではない。
「いや、そもそもこの病室は関係者以外立ち入り禁止だ。アーノルド、君も出るんだ」
「冗談じゃないね。お前こそ出て行け。俺こそが関係者だ」
「公務執行妨害でしょっ引くぞ」
「やれるもんならやってみろ優男」
アーノルドはデズモンドを罵ると、死神の方を向き、
「で、てめぇはどこのもんだ。親父さんの命を取りに来たのか?」
「まあ、そんなところです。よくわかりましたね」
慧眼に死神が感心していると、二人の表情が変わった。アーノルドは懐から、デズモンドは腰から拳銃を抜いてこちらに向けてくる。その二人の背後で、男が呻き声を上げた。今にも死にそうだ。死神も懐に手を入れる。
「動くな! 手を挙げろ!」
刑事デズモンドが声を張り上げる。死神がエコバッグを取り出すと、二人は不出来なジョークでも聞かされたような顔になった。
「……何だこいつ」
「こっちが聞きたいね……アーノルド、君も銃をしまって……」
その時、男の心拍を測っていたモニターから、甲高い電子音が鳴り響いた。
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