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黒川 美鈴 Ⅱ
夏休みが終わり九月が始まる。九月になったからといって急に季節が夏から秋に変わるわけではないがどこかに季節の変化を意識してしまう。まだまだ夏の尾を引き強い日差しを照らしている日も多く、夏服のブラウスを汗で濡らしていた。
そんな残暑が続く学校では文化祭の話題が出始めていた。生徒達はやれうちのクラスはホットドック屋をやるだとか、うちのクラスはお化け屋敷をやるなど口々にし楽しそうにしていた。
私と綾ちゃんはガヤガヤする教室の片隅で机を向かい合わせお昼のお弁当を食べていた。みんながグループを作りはしゃぎながら各々の昼食を口にする中、私達はひっそりと会話をしていた。
「何かそろそろ文化祭らしいね。綾ちゃんは文化祭楽しみ?」
「文化祭かぁ、まぁあんまり興味は無いかな。コミックス販売店とかやるクラスがあれば見てみたいけどね。美鈴は?」
「私もあんまり……。もし綾ちゃんが楽しみにしていたら私があまり乗り気じゃないから悪いなって思ったの。でも良かった……」
「まぁ、私らには無縁なイベントじゃないかなー」
綾ちゃんはその話題に興味がないようで何か別の事でも考えているのか、無造作にお弁当の卵焼きを箸で摘んで口に放り込む。――あぁ良かった。綾ちゃんも興味が無いみたいで……。私達はやっぱり同じ感覚なんだなと私は嬉しかった。
昼食を食べ終わり机にはノートが広げられ、いつものように二人で漫画のキャラクターを書いたり、そのキャラクターを使った短いお話を作ったりして過ごしていた。これは私達が中学時代からよく行っている遊びで、こういったノートは何冊も出来上がっていった。
特に二人以外に混ざるという事もなく昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。教室に横たわっていたざわめきは姿を消し、みんなは一様に席へついて五時限目の開始を待った。
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