黒川 美鈴 Ⅲ

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私達のクラスの模擬店であるハンバーガー店は大盛況だった。クラスメートは綾ちゃんのデザインしたハンバーガーを擬人化したピンク色のTシャツを着ていて私もそのTシャツを着ていた。綾ちゃんの絵が大好きな私だったが、そのデザインは好きではなかった……。しかし、クラスメートはもとより模擬店に来たお客さんには人気を博した。  クラスメートと打ち解けっていった綾ちゃんは文化祭当日もハンバーガーの売り子をやったりと忙しそうにしていた。  私は特に割り当てられた仕事も無かったので一人で過ごす時間が増えていた。文化祭の楽しげなざわめきが私の孤独をより一層際立てさせた。綾ちゃんと一緒の時はそんな事を感じる事がなかったのに……。 「綾ちゃん今日も一緒に帰れないかな?」  文化祭も終盤に近づき片付けをしている時に綾ちゃんに話しかけてみた。 「美鈴、文化祭お疲れ様! なかなか盛り上がっていたねー。私のTシャツも人気でなんだか楽しかったなー」 「あっ、そうだね……。ねぇ今日一緒に帰れる?」 「ん? 今日は文化祭の打ち上げをやるみたいだよ? 美鈴も一緒に行こうよ!」 「……打ち上げ行くんだ? 私は……今日は用事があるから行かない」 「そっか、残念だな。美鈴とも打ち上げで一緒にいたかったな。でも用事があるんじゃ仕方ないよね。じゃ、またあしたね!」 「……うん。またね……」  そう言うと綾ちゃんはクラスメートの元へかけよって行った。私の中で何が決定的に崩れていった。それは今まで騙し騙ししてきた嫌な感情。綾ちゃんが私から離れていってしまう、私だけを取り残してどこかへいってしまう。それは裏切りとも不信感とも言える嫌な感情だった。 ――綾ちゃんは変わってしまった。もう私達の関係性は存在しないんだ……。  文化祭以降私達の関係はドンドン変わっていった。綾ちゃんはクラスの人気者になっていった。内気な性格だったが実は根本的には快活な性格だったのであろう。文化祭の一件がその変化のきっかけになったのだ。綾ちゃんにして見ればそれはプラスの変化で通常であれば友人としては喜ばしい変化だと思う。しかし私はそうは思えなかった……。  私は昼食を一人で取る事が増えていった。別に綾ちゃんが私を避けているとかではなく、みんなの中で楽しそうにしている綾ちゃんを見ているのが辛く、お昼休みになるといそいそと教室を出ていく事が増えた。同様に授業中でのあの遊びも行わなくなっていった。  そんな私を綾ちゃんは今までと変わらず接してきていたが、私が意識してしまいあまり楽しい時間を過ごす事が出来なくなっていった。
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