黒川 美鈴 Ⅳ

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翌日から綾ちゃんはクラスメート達を意識的に避ける様にしていった。理由を知らないクラスメート達は初めは不審がり綾ちゃんに理由を聞いていたがうまくはぐらかされていた。そう言った態度が続いていくとクラスメート達の方も綾ちゃんに近寄らなくなってきた。それは腫れ物に触らない様にしていくかの様だった。そして、いつしか私達は私が望んだ様に以前の様な関係に戻っていった。  いや、戻っていくはずだった……。しかし、実際は私が期待していた様にはならず、それよりもひどい現実が待っていたのだった……。  ウソをついて以来綾ちゃんと以前の様に共に過ごす時間は増えていった。その事に私は喜びを覚えたが、その過ごしている時間の内容は明らかに違っていた。綾ちゃんはあれだけ好きだった絵を描かなくなっていったし、上の空な事が多くなり会話も弾む事は少なくなった。 「綾ちゃん何か絵を描いてよ! そしたら私がまた面白い言葉をつけるよ!」 「あぁそうだね……、でも今はちょっといいかな……」  こういったやりとりを何度か重ねていく内に徐々に綾ちゃんは学校を休みがちになっていった。学校を休む日が五日、一週間と増えていき、この頃には私はウソをついた事への罪悪感が芽生え始めていた。 ――私がウソをついたから綾ちゃんはこんな事になってしまったんだ。  やがて綾ちゃんは全く学校へ来なくなってしまった。そうして、年も明けたある日担任のアンコウから綾ちゃんが引っ越した事がクラスに伝えられた。 ――私のせいだ……。私はただ綾ちゃんと一緒にいたかっただけなのに……。どうしてこんな事になってしまったんだろう……。
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