WB LIE Ⅱ-Ⅰ

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「あの……、WB LIEってここから別の――いわゆるこの世界とは別の場所にあるんですよね?」 「……。あぁその事ですね。そうですね……、結論から申し上げるとWB LIEの所在地はここです」 「えっ! だって所長、この世界から繋がりが――」 「まぁまぁ、焦らないで聞いてください。確かに私はこの世界から繋がなりがなくなってしまうと申し上げました。それは半分は本当で半分はウソです」 「なっ……」  慌てている僕をよそに所長は滔々と喋り続ける。 「つまりですね。本当の部分はこの地は中心部から遥かに離れた場所にあります。西島さんのいらした場所ともかけ離れています。物理的な面ですね。まぁ皆川くんが嫌がるのを見ても分かりますよね?」 「そうよ! こんな所別世界もいいところよ! お洒落なカフェや洋服屋さんだってないんだから!」 「まぁまぁ皆川君……。そしてウソの面は、西島さんの覚悟の確認の意味もありました。この仕事は不思議な仕事です。軽い気持ちで始めたり、辞めたり出来るようなものではありません。文字通り今の自分の世界を捨ててもいいという程の気持ちがなくてはなりません。そういう意味でああ言ったのです」  僕はよく分かったような分からないような気がした。要するにこの仕事をするには『覚悟』が必要という事なのだろう。 「なので、全てを捨てる事が出来るとおっしゃった西島さんにはその強い気持ちがあると判断して採用したのです」 「まぁ、私はすぐに揺らいでしまいましたけどねー」  所長の話を聞いて身の引き締まる感覚がした。最初からこの仕事を心からしたいと思い、覚悟はしていた。それでも改めて言葉にして聞くとひとしおだった。    その後所長からWB LIEでの仕事や生活の説明があった。WB LIEはウソをついた人の強い後悔の念に反応して、その人の周辺に事務所ごと移動する。  そうして、対象者と接触してウソをついた過去をやり直すきっかけを作るという事が基本的業務のようだった。依頼が完了するとこの場所に戻り報告書をまとめて提出する。それがどこへ提出して、何の為に提出するのかは時間がかかるとの事で説明をはぐらかされてしまった。 「そうですね……。大まかにはこの様な感じです。細かい所は実務をこなしていきながらの方が理解しやすいかなと思います」 「あ、あのー、依頼者からの反応があるまでは何をしていればいいんですか?」 「基本的には調べ物や報告などがあるのでそのお手伝いが中心になります。私は色々と研究する事があるのでそういった事を日々していますね」 「私は休みの日に街の方まで出て日雇いのバイトをしたりしてるよ! お金を貯めておかないと依頼で都会に行ったりした時に買い物出来ないからね。この島はホントに……」 「退屈しのぎにはいいんじゃないですかね? ただ依頼者からの反応があった場合は全員出動になりますので、もしバイトをする様なら急に帰らなくてはならない事は伝えておいた方が良いですね」  里佳子さんの愚痴が始まってしまいそうな所、所長がうまくカットインしてくれた。愚痴が長くなるかなぁと思ったのでホッとする。  しかし、そんな都合のいいバイトなんてあるんだろうか? それに街とはおそらくこじんまりしたものだろう。依頼の反応があるまでに一回行ったみたいなと思った。
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