WB LIE Ⅱ-Ⅱ

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「あ、あの! これは依頼者からの反応なんですよね?」 「そうだよ。このアラート音が鳴ると反応を受信したって事になるの。それで、この画面にある数字が依頼者が後悔のウソをついた日って事なのよ」 「やはり……、じゃこれから過去にタイムリープするって事ですか?」 「いや、西島さんも経験した事があるかと思いますが、まずは現在の依頼者の付近へこの事務所がワープします。そして、依頼者との接触を待つのです」  二人の視線は画面に釘付けになっていたが、早口で状況の説明をしてくれた。 ――ついに来た。僕にとっての初めての本格的な仕事だ。  あまりにも突然の事で動揺はしていたが、それを抑えるかの様に腹の底に力を入れて気を引き締める。 「どんな感じでワープするんですか? 結構揺れたりします?」 「もー! 君はうるさいな! 少しは落ち着いてじっとしてなさい!」  里佳子さんに怒られてしまった。 ――動揺するに決まってるじゃないか。初めての事なんだから……。  少し不満を覚えたが、それを口にすると倍以上の言葉が降りかかってくると分かっていたので気持ちを飲み込んだ。 「そんなに、構えなくても大丈夫ですよ。ワープといっても荒々しいものじゃなくて、スッとしたものですから」  するとこの建物の内観にノイズが走る。そのノイズはしだいに大きなノイズとなっていく。次の瞬間カメラのフラッシュが焚かれたかのようにピカッ光が放たれ、僕は手で顔を隠すようにして目を閉じる。体が浮きがるような感覚に陥りフワッとした。その感覚が徐々に収まってくると僕は目を開けた。  先程まで浮かんでいたノイズはなくなり、そこには平穏な景色があった。今まで見てきた事務所の風景には何ら変化は感じられずありふれた空気感がそこにはあった。別段何かおどろおどろしいものが発生していたり光り輝く異世界といったものになるのかとも思っていたがそんな事は無かった。
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