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若干拍子抜けした感のある僕は何か変わったものはないかと辺りを見回していると所長と里佳子さんと目があった。
「ねっ! 騒ぎ立てる程じゃ無かったでしょ」
「えぇ……まぁ」
ウソだった。正直言うとびっくりしていた。怖かったといっても遜色ない。だが、里佳子さんには言わなかった……。
「さてと、無事ワープも済みましたし依頼者を待つとしますか」
「待つってどれくらい待つんですか? 僕の時はどうでした?」
「待つ時間はその時々で変わりますので何とも言えませんね。西島さんの時は一週間位でしたかね」
「そうそう、君はなかなか現れなかったよ。だからカフェと間違えて何人も入ってきて……全くもう」
里佳子さんは僕の事になるとすぐに不満そうになる。僕も慣れてきたので聞き流す事にしている。
「待っている間は島にいる時と同じ様な感じですか?」
「そうですね。基本的には同じ感じです。ただある程度の状況把握の為周りを散策したりと、そういう業務も入ってきますね」
「そうなの! 私はその業務が好きなんだ。その場所が都会だとテンション上がるしね。お洒落な洋服屋さんないかなーとか」
「そういう事を私の前で言うんじゃありません」
「すいませーん」
二人のやりとりはいつもこの様な感じで所長は注意はするがそこまで本気ではない様だ。僕はこのやり取りが何気に好きだった。
「では、西島さん。初の実地業務ですね。まずは周りの状況を確認してきて下さい」
そう言われて僕は事務所を出る。初めてのワープで感じた動揺も二人のやりとりを聞いて落ち着いて来ていた。事務所のドアハンドルに手を掛け外に出る。
すると辺りは暗くなっており、雨もポツポツと降り始めていた。ワープする前は昼過ぎだったので時間の経過にもなんらかの影響があるのだろうと思った。外の暗さに目が馴染むとそこは街と住宅が入り混じる様な街の外れのようだった。
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