WB LIE Ⅱ-Ⅲ

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 そうこうしていると所長が大まかな説明を終えたようで黒川さんが信じられないといった表情を浮かべていた。それを見ておそらく黒川さんが今回の反応を発信した依頼者であろうと予測がついた。  僕も以前所長の名刺を見た時には運命的な感覚を抱いた。自分の為にあるような言葉じゃないかと感じたものだった。黒川さんも今まさにそう思っているのではないだろうか。 「後悔のウソを無くす事が出来るというんですか? あまりにも信じがたい話なんですが……」 「黒川さん、貴方がそう言う気持ちは分かりますよ。ただこれは本当です。僕も一度このWB LIEにお世話になっているんですよ。僕の言葉も信じられないかと思いますが、もし黒川さんも後悔のウソがあるなら飛び込んだ方がいいと思いますよ」 「確かに後悔しているウソはありますよ……。だいぶ昔についたウソですけど、ずっと心に引っかかっていて……。それが今日あるニュースを聞いて、ついに自分自身を誤魔化す事が出来なくなりました……」  黒川さんは強く後悔するに至った原因を思い浮かべているのか再び顔を青ざめせていった。やはり、黒川さんの人生において大きなしこりとなっているのであろう。それは取り除かなくては決して良くならない。次第にしこりは大きくなり彼女自身の心を塞いでいってしまうだろうと思う。  僕は黒川さんの気持ちを後押ししたかった。本当に後悔のウソを持っているのであればこのチャンスを逃す手はない。信じられない気持ちも分かるが僕は経験している。後悔のウソを引き取ってもらった経験を……。 「貴方はこの話に乗らないと、また新しい後悔を作ると思いますよ。僕たちの話が信じられようが、られまいがチャレンジしてみるべきだと思います。一歩を踏み出さない事には何も変わりませんよ! あなたは自分のついたウソによって引き起こされた今の人生に納得しているんですか?」  必死に訴えた。自分のついたウソに納得出来ていないのであればそれは悪いウソだ。そんなウソに引きずられた人生なんかでいい訳がない。それを分かって欲しかった。その一心から言葉を吐き出した。黒川さんにも届いて欲しい……。 「……分かったわ。えぇ……、そうですね。こんな機会二度とありませんよね……。お願いします! 私のウソを引き取りに行かせて下さい!」  黒川さんの顔から青ざめた様子はなくなっていた。今あるのはそれとは対照的な、強い意志を持ったような表情に見える。
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