黒川 美鈴 Ⅶ

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「トントン」  ハッとする。誰かが部屋のドアをノックする音が聞こえる。誰だろうと思い返事をすると母の声が聞こえてくる。 「美鈴! 綾ちゃんが来ているけど?」  ――っ! なんで綾ちゃんが?   まさかの事態だった。私が急に声を荒げて逃げる様に帰ってしまったので心配して来てくれたのだろうか? もしかしたらまだ昔の様な関係性に戻れるんじゃないか? 私の頭にわずかな光が差し込んできた様に感じた。しかし、半信半疑な私は今綾ちゃんの前に出て行く気持ちにはなれなかった。綾ちゃんの出方次第では以前の様なウソをついてしまうかもしれない、少し頭の中を整理したかった。 「美鈴!」 「あ、ごめんなさい。ちょっと体調が悪いから綾ちゃんにそう伝えてもらえる?」 「あんた、体調悪いの? 大丈夫?」 「大した事ないから大丈夫……。よろしくね」  母に言ってもらい綾ちゃんには帰ってもらった。でもこうやって心配してくれている事にまだ望みはあると感じており、明日もう一度アプローチしてみようと思った。時間も限られていので直接的に言ってみようと考えていた。  そうやって2度目の誕生日もいい事がなく終わり、翌朝の登校時綾ちゃんと一緒になる。お互い気まずい空気を感じていてばつが悪い。 「綾ちゃん、昨日はごめんなさい。私どうかしてたわ……。急に帰ったりしちゃって……」 「こっちもごめんね……。体調大丈夫?」 「昨日も心配して来てくれたみたいだね。体調は良くなったよ!」 「良かった……。私のせいだよね。ごめん……」  二人で謝りながら歩いていく。綾ちゃんはやはり心配してくれている。その気持ちは感じられるが、昨日の一件をお互いが意識しつつ会話が途切れ途切れとなり足取りが重い。  その居心地の悪さも後押しし、今直接聞いてみるべきだという気持ちが私の頭の中を支配していく。恐る恐る口を開いた。  
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