WB LIE Ⅱ-Ⅳ

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 そう言われスマートフォンを手にして黒川さんに電話をかける。以前過去で里佳子さんからの電話を受けていたが、いざ実際自分がかけてみる事になると時空を超えて電話をかけるなんて不思議な感覚だった。ただよくよく考えてみると通常の電話も姿形が見えない相手と話す事が出来るなんて、それだけで十分不思議だなと余計な事を考えてもいた。 「ふぅ、電話連絡完了しました。やはり信じられないって感じでした。僕の時よりずっと昔に移動してるから、よっぽど不思議な気持ちなんでしょうね」 「ご苦労様。いきなり体も高校生だもんね、びっくりするよね……。じゃしばらく様子を見ましょう」  そして、黒川さんの身体を交代で観察しながら外の散策や経過の記録などを行なっていた。途中、喜んだ表情やひどく怒った表情などが表れ僕は電話をしようかとしたのだけれど、里佳子さんから干渉のしすぎも良くないと諭されタイミングを見送ったりもした。  黒川さんが過去に戻り2日目の事だった。時間経過的には上手くいっていればウソを無くして新たな展開が進んでいるであろう時だ。  僕は資料整理の傍ら黒川さんの表情を確認していると嫌な表情をしている事に気付く。どこがどう嫌な表情と言われると表現しにくいが直感的に良くない顔つきだと感じた。全てを悲観するような、諦めが生じているような……見ようによっては達観しているような、そんな表情だった。 「ちょっと里佳子さん! 黒川さんの表情を見て下さい!」 「なに? どうかしたの?」 「早く来て下さいよ! 何か上手く言えないんですが、あまり良くない事が起こっているような気がするんですけど……どう思いますか?」  僕の慌て振りとは対照的に、特に急ぐ様子もなく歩いてくる里佳子さんに若干のイラつきを覚えつつ、黒川さんの前と促す。  急かされたのを嫌ったのか不満そうな態度を示しつつ黒川さんの前へ来て表情を確認する。その後僕の方へ振り返った里佳子さんの顔は真剣味を帯びていた。 「確かに気になる表情だね……。何が起こっているんだろう、過去で。ちょっと寛太くん電話してみてくれない?」 「分かりました! 電話してみます!」  僕が感じた異質な感覚を里佳子さんも感じ取ったようだった。はやる気持ちそのままにスマートフォンを手にして過去へ電波を飛ばした。
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