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恵理の言葉を聞くと、状況や恵理の口調を完全に無視し言葉の意味だけを素直に受け取って、少女は顔を輝かせた。
「そう! そう! 女の子から見ても、そう思う!」
少女は喜び、はしゃいだ。
そして、続けた。
「実はね……。あたし、これから逢い引きなの」
「あいびき?」
恵理はハンバーグを作った時に、料理本のあいびき肉を思い出し聞き返した。
「あ。今は、でーとって言うのよね。デート……。デート…………か。
えっとね、あたしが車に轢かれそうになったのが、きっかけなんだけどね。あの人、親切にしてくれるだけで、すぐに居なくなっちゃったの。
だけど、この前偶然再会したのよ。でね。あの人も、あたしのこと覚えてくれていたの♥」
少女は、その時の感動と喜びを思い出すように合わせた手を組み、上方を見上げていた。視線の先には、ローン広告が貼ってあったが、彼女には、そんなものは見えていないのは、恵理には分かった。恋する乙女というやつだ。
「あたし、絶対にこの瞬間を逃しちゃいけないと思って、思い切って、あの時のお礼をさせて下さいって言ったら。あの人、『いいよ』って言ってくれたの。あたし、嬉しくって聞き返したら、二つ返事どころか、五つ返事くらいしてくれたの」
少女は、顔を両手で覆って顔を左右に振った。
その姿を見ながら、直感的に恵理は思った。その「いいよ」という言葉の連発は、0Kの意ではなく否定の意であることだと思ったが、隣で至福に包まれている少女に、その直感的な考えを口にできなかった。
「でもね。あたし、かなり生きてるのに男知らないの。女は……なんでもないわ、気にしないで。……とにかく、付き合ったことないのよ。本で読んだんだけど、初体験平均年齢が20.3歳って書いてあるのよ。あたしが何年生きていると思ってるのよ。人間ってば早過ぎ!」
怒っているようにも、悔しがっているようにも見える表情で、少女は拳を力強く握った。赤面したくなる話を、けろりと口にする少女に、恵理は、高校生の自分に変な話をしないでよと思いつつも、どう見ても自分と同年代にしか見えないことに疑問に感じたが、質問できる状況ではなかった。
「あたし、お礼したいって言っても、得意の猫まんま作ってあげたんじゃ色
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