妖神

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妖神

 江戸時代後期の国学者・平田篤胤(ひらたあつたね)は、日本国を創り人々を守り導く神である大国主命(オオクニヌシノミコト)と、災いや不吉な出来事をもたらす妖神(まがかみ)との関係に即して、幸福について述べた。  大国主命は、 「現世では有得の者となり、死後は霊妙な神になれよ」  という気持ちで、人々を励まし導こうと考え、善人にはわざとつれなく振る舞い、妖神に苦しめられていても救わない。  これは善人が災難に遭ってもその志を変えないかどうかを試すとともに、善人が犯した過ちを罰しているのだ。徳のある行いを心がける者も、些細な罪は必ず犯すからである。一方、妖神どもが凡人を(そそのか)して悪行を勧め、仮初の幸福を与えるのを、大国主命は何もせず見ている。  これは、凡人であっても、わずかな善行さえ行わない者はいないので、その行いに報いるとともに仮初の幸福を与えられた凡人が、ますます(おご)りたかぶるかどうかを確かめているのである。  これこそが大国主命が、人々を真の徳行い(いざな)い、真の幸福を獲得させるための教えなのだ。  『古史伝』より
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