結婚前夜

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「ご先祖様。  卯崎さん……、  允さんをこの世に産んでくださってありがとうございました」  允に対する気持ちが恋なのかどうか、まだわからないが。  允という人間は好きだ。  彼という存在がこの世に居てくれてよかったと、昨日、心の底から思った。  手をつき、深く頭を下げてから、部屋を後にする。  出ていく寸前、障子に手をかけ、振り返った。  いつか見た夢を思い出す。  大勢のお地蔵様が自分を取り囲んで微笑んでいた。  莉王はもう一度、並ぶご位牌に向かい、頭を下げた。
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