結婚前夜

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「忍さん、そんな無茶な要求しなくていいです」  なにも考えてないときは、さらっと凄いことを言ってくれたりするが。  頭でこう言えば、相手が喜ぶだろうとか考えて言えるような人間でないことは、もうよくわかっている。  忍もわかっているのだろう。 「だよね~」 と苦笑いして、言っていた。 「じゃあ、またあとで」 と忍が出て行き、潮も連れてきた彼氏のところに戻ってしまう。  允と二人きりになると、なんだか気詰まりだった。  お互い、黙って俯いてしまう。  莉王は、ちらと壁に設えられている大きな鏡を見た。  あーあ。  この人に嘘くさく褒めて欲しいとは思わないけど。  でも、……やっぱり、ちょっと。  このドレス。  一目で気に入ったんだ。  卯崎さんは迷わなかったからびっくりしたって言ってたけど。  迷う必要もないくらいに、気に入ったんだ。
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