結婚前夜

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 シンプルなビスチェタイプの白いウェディングドレス。  胸許に少しだけ、シルバーの刺繍が入って、ビジューがあしらわれている。  ちょっと泣きたくなってきたな、と思っていると、耳許で声がした。 「言いなさいよ、自分で。  ちゃんと見て、褒めてって。  じゃないと結婚しないからって」  ……だから、あなたは、いつ成仏するんですか、と苦笑いして振り返ったが、清香は姿を見せては来なかった。  二人きりのところを邪魔しないよう、気を使ってくれているのかもしれない。  いや、話しかけて来たら同じことだが、と思いはしたが、嬉しかった。 「結婚は女の夢なのよ。  何ヶ月もかけて、準備するのも楽しみなのよ。  それをこの男は奪ったのよ。  ここで褒め言葉のひとつもないようなら。  その気の利かなさが原因で、きっと破局するわよっ」  い、いや、そこまでは……。  ずっと大人びた印象だったのだが。  やはり、そこは高校生。  ピュアなまま時間が止まっているところもあるようだった。  真那斗や忍さんが、あんなに清香さんを気にかけていたわけがわかる気がする、と莉王は思った。
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