結婚前夜

69/100
前へ
/566ページ
次へ
 年のわりに世捨て人のような落ち着きがありながらも、こういうピュアな一面もある。  そのアンバランスさが魅力ある雰囲気を醸し出していたのだろう。  だから、高崎先生とやらも、彼女から離れがたかったのに違いない。  この人、ウェディングドレス似合ったろうな。  長い黒髪と白い肌が白いドレスによく映えて。  そんなことをぼんやり考えていたとき、允が言った。 「……綺麗だ」  え? 「……と、思う」  断言してくださいっ、と思ったが、俯き、落ち着かなげに言う允には、これが精一杯だと知っていた。  莉王は、まっすぐ允を見上げて微笑む。 「ありがとうございます」  允はまた目をそらしてしまったが、その表情がなんだか可愛くて笑ってしまった。
/566ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2331人が本棚に入れています
本棚に追加