結婚前夜

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 吹っ飛んだ莉王は木製のベンチに座っていた忍の上に倒れ込む。 「王様、重いっ」  かさばるウェディングドレスに顔などを圧迫されて、忍がうめいていた。  城ヶ崎が女の腕をつかんでいる。  允が彼女の手からナイフを落とそうとするが、振り回すので、うまくいかない。 「王様、危ないから、避けて」 「莉王っ、こっちにっ」  忍と潮に引っ張られたが、莉王はドレスの裾をたくし上げて、立ち上がる。  つかつかと乱闘している三人の許に行った。  深呼吸すると、左を向き、一度、身体を沈ませる。  そのまま、回転させるようにして振り上げた左足で、女のナイフを蹴り落とした。  着地したその反動を利用し、更に一回転して、今度は右足で女の肩を強打する。  バージンロードに吹き飛ばした。  子どもの頃、よく和子や横暴な兄をこらしめた技だ。  飛ばされた女は、なにが起こったのかわからず、きょとんとして座り込んでいる。 「やるのなら、よそでやって!」 と莉王は叫んだ。
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