結婚前夜

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 アパートの階段を上がるとき、マイバッグがない方の手を允が握ってきた。 「いやあの……ちょっと、恥ずかしいんですけど」 と莉王は人目を気にしたが、允は、 「別に。  もういいじゃないか。  夫婦なんだし」 と言う。 「ま、まだ、夫婦じゃないですよ。  婚姻届出してないですし。  明日も結婚式がありますしね」  允が顔をしかめた。 「今日、式をしたんだから、夫婦だろう」  俺は今日は此処に泊まる、とまで言い出す。 「駄目ですよ。  まだ結婚してないんですからっ」 「してる」 「してないですーっ」  大声で揉めていると、パーカー姿の隣の男性が出て来た。 「こ、こんばんはー」 と挨拶すると、 「こんばんは」 と返しながらも、このカップル、なに揉めてんだ? という目で振り返っていた。 「と、とりあえず、入ってください」
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