結婚前夜

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 ご近所さんの手前、あまり揉め事は起こしたくない。  だが、鍵を開け、中に入った途端、允が後ろから抱き締めてきた。 「い、いや、あの、允さん」 「もう結婚式もしたし、いいだろう」 「よくないです。  スイーツも食べなきゃ」 「冷蔵庫にでも入れておけ」 と言ったあとで、允は真面目な顔で莉王に言う。 「ちょうどよかった。  お前と初めて結ばれるのは、俺のマンションより、お前のアパートの方がいいと思ってたんだ」 「な、なんでですか」 「お前の今までの人生、すべてを受け止めたいからだ」  ちょっとジーンと来てしまったが、よく考えたら、このアパート、住み始めて何年も経っていない。  この人、わりと適当だな、と思いながら、 「ちょ、ちょっと待ってください。  もうちょっと待ってくださいっ」 と部屋の奥へと後退する。  允は、一、二、三歩歩いて、 「待ったぞ」 と言う。  意外と気が短いなーっ。
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