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原田がなにかを取りに自分の車に戻ってる間、忍は手際良く、もう使わないものを片付けていた。
その背に向かい、莉王は訊く。
「そういえば、忍さん。
今日は、王様って言わないですね」
「ちょっと今日から気分変えてみたんだ」
忍は振り返りながら、機嫌良く言ってきた。
そうなんですか、と莉王が鏡の中の忍に微笑みかけると、
「そう。
前言ったじゃない。
僕、人妻って、好みなんだよね」
そう言うやいなや、莉王の頬に軽く口づけてくる。
忍は目の前の鏡を眺め、莉王の鬘を左右の手で押さえてみながら、
「うん、いい出来」
と微笑む。
今のはどういう意味のキス?
いい出来だったから?
人妻が好みだから?
ぐるぐるそんなことを考えながら固まっていると、
「開けていいか?」
と声がした。
どきりとする。
障子の向こうに允の影が映っていた。
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