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「自分でわかってないだけで、きっとそうだったんだよ。
そうじゃないと、この朴念仁が、ちょうどいい相手を見つけたなんて、相談の電話かけて来ないよ。
で、莉王ちゃんは?」
と訊かれ、莉王は、は? と答える。
「莉王ちゃんはいつ、允を好きだと思ったの?」
「思ってません」
なにっ? と允が振り返った。
「昨夜も言ったじゃないですか。
好きじゃないこともないかもしれないって」
允が今、心の中で思って呑み込んだのだろうことを忍が代弁してくれる。
「往生際悪いね~、莉王ちゃん」
「だから……
一生かけて、考えてみようと思っています。
卯崎さんを好きなのか、どうなのか」
ずっと貴方の側で、貴方を見つめて。
允に微笑みかけると、允は照れたように、また視線を逸らしてしまう。
貴方と恋に落ちる瞬間を、一生かけて探してみようと思うけれど。
それはたぶん、きっと、いつ訪れたのかもわからないくらい緩やかに訪れるものなのだろう。
もしかしたら、もうその瞬間、通り過ぎちゃってるのかもしれないしな……。
式の間中、莉王は、そんなことを考えていた。
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